2016年11月4日金曜日

都電本ガイド(10)東京都電の時代

(吉川文夫・著、大正出版、1997年)

「鉄道友の会」で長くご活躍された吉川文夫さんによる都電写真集です。江戸名所図会方式で、有名どころを多く紹介しながらも、志村線までしっかり押さえています。

この本では緑色を中心とした旧塗色時代の電車が多く取り上げられています。ほとんどがモノクロですが、一部カラーもあり、色の変遷についてイラスト(市瀬哲雄さん作)で解説しています。私はクリーム色ベースの時代しか知らないため、よく覚えている車両が別の色で走行する姿には、ヘアスタイルを変えたような新鮮さを覚えます。停留場標、乗車券などの備品類にも章を設けていて、丁寧な作りです。

色については「都電の塗装色の経緯」の記事でも解説されていますが、さすがの吉川さんも文章だけではニュアンスを伝えることに苦労されておいでです。カラーフィルムの普及が追い付いていなかったことは改めて残念です。

旧き東京を愛して、現状を嘆きつつも、林さんの本ほどの鋭さが見られない筆致はお人柄の反映でしょうか。「古くはエノケン、いまではキムタク」(130ページ)など、執筆当時の状況さえ時の流れが感じられます。


吉川さんはトロリーバスに対しても好意的に見ておいでで、中目黒の東横線ガード下や、中川放水路を渡る姿は貴重です。