2016年10月27日木曜日

都電本ガイド(18)よみがえる東京 都電が走った昭和の街角

(三好好三・編、学研、2010年)

著者はペンネーム?なのでしょうか、元・高校教諭で、退職後に鉄道に関する本をいくつか編集した方です。

本書は、高松さん、荻原さん、吉川さん、井口さん、江本さん、日暮昭彦さん、巴川孝則さんなど都電の写真を多数撮影された先達の方たちの写真を改めてまとめなおした内容です。地域別編集になっていますが、板橋区は文字通り板橋地区だけで、なぜか志村は無視されています。滝野川五丁目の誤りは既に指摘しました。

この時代には既にデジタル処理も当たり前になっていて、おしなべて写真がきれいになっています。その中で、荻原さんが撮影された一之江線の水郷風景の写真は、絵画をみるようではっとさせられました。現実には土や草、生き物の匂いが強く漂っていたのでしょうが、清潔に見えるから不思議なものです。

系統データは電車営業所別にまとめて、営業所全体の廃止月のみを記す方法で、ややこしい問題を巧みにかわしています。その一方で「2系統は重要路線で、37系統は2系統と20系統を補完する性格を持っていた」と、本末転倒の書き方をしているあたりが残念です。「2系統は18系統と35系統を補完する性格を持っていた」ですね。

「都電計画路線」のお話にはびっくりしましたが、よく読んでみたら関東大震災復興都市計画のことで、正確には「市電」です。実現したら系統数はゆうに60を超えるはずで、現在のバスと同様地域名を入れる方式になっていたでしょうか。