2016年11月6日日曜日

都電本ガイド(8)故郷の風景 路面電車

(神達雄・著、トンボ出版、1993年)

著者は別府生まれで、お仕事のかたわら都電をはじめ、全国各地の路面電車を撮影されてきた方です。本書は前半を都電の各系統(141826を除く)にあて、後半は他都市の電車の写真を収録しています。ご家族と思われる子供や、道行く人の姿が写るカットも結構多く、今の時代ならば問題視されるかもしれません。事故を起こした電車について説明する文章や、奥様が遭遇した事故のお話なども、インターネットの時代では厳しく非難されかねません。1990年代前半くらいまでは、まだ昭和的価値観で十分暮らせたことを物語る本です。

その一方で、当時の人々が暮らしていたたたずまいが都電を通じて鮮明に浮かび上がってくることも事実です。何でも見とがめて犯罪人扱いする昨今のご時世は、それだけ悪い知恵をつけた人が増えたということでもあるのでしょうが、やや窮屈にも思われます。後年、2010年代の写真はスマホの自撮りしか残されていない…ということにもなりかねません。

志村線最終日の写真は、装飾電車が巣鴨車庫に入庫する横で一服している作業員の姿が印象的です。まだ明るい時間帯から撤去準備を始めていたのでしょう。
江東デパート(墨田区、錦糸町駅前)の部品即売会の様子や、博多駅1番線駅名標の「ちくぜんみのしま」(筑前簑島駅、1983年=昭和58年廃止)も貴重な資料です。